マッコウクジラについて
浮力
- 体内の大量の脂肪分によって、クジラは水中で自然に浮力を得ています。マッコウクジラは頭部の油(鯨蝋)の温度を調整することで、浮力を調 節していると考えられています。クジラが水面の寒気にさらされると、油は冷やされて固形のワックスに変化します。ワックスは水よりも密度が高いので、これ を利用して深く潜水します。
- 鯨蝋周辺の毛細血管に血液を送り込むと、ワックスは融けて油に戻り、クジラは水面へと上昇できます。
大きさはどのくらいですか?
- マッコウクジラは最大の肉食動物(ハクジラ類)で、クジラの仲間では4番目に大きい種類です。
- オスのマッコウクジラは体長15~20mに成長し、体重は40~60トンに達します。
- メスのマッコウクジラはオスよりもおよそ30~40%小型で、体長約12mまで成長します。
マッコウクジラの歯
- マッコウクジラは、下顎に左右各20~30本の円錐形の奥歯があります。 上顎には口を閉じた時に下顎の歯が 入り込むための窪みがあります。
- マッコウクジラは、歯を噛むためには 使いませんが、クロコダイル(ワニ)のように素早くかぶりついて丸飲みします。
- マッコウクジラの1本の歯は、重さ1kg、長さは20cmに達します。
マッコウクジラの一生
- オスのマッコウクジラは、誕生後8~12年間、家族の群れと共に熱帯の海で過ごします。
- 群れのメスは、子クジラの泳ぎが上達するまで約2年間サポートします。
- オスが10歳位で思春期を迎えると、家族の群れを離れて独身のクジラだけで群れを作り、カイコウラ沖などの餌場へ移動します。
- オスのマッコウクジラは完全に成長するまでパートナーを作らないので、それまでの間は滅多に餌場を離れることはありません。
- マッコウクジラの寿命は70歳以上です。
どこで見られますか?
- マッコウクジラは世界中の海に住んでおり、通常水深400m以上の海底谷にいます。
- マッコウクジラは、カイコウラの海岸線沖では1年中見ることができます。
- カイコウラの海底谷は、オスのマッコウクジラの餌場です。
- オスのマッコウクジラは約30 ~40cmの脂身(脂肪)を内蔵器官の周りに蓄えています。この脂身はウェットスーツのような役割を果たし、クジラを冷たい水から保護しています。この同じ水温は、オスのように厚い脂肪層をもたないメスのクジラには冷たすぎます。
- そのため、メスのマッコウクジラは通常、熱帯に近い、もっと温かい海に住んでいます。
何を食べますか?
- マッコウクジラはハプカ(マハタの一種)や、リング、マグロ、ブラックシャーク、キングフィッシュなどの大型の海水魚を食べますが、好物はイカです。
- マッコウクジラは捕獲が難しいダイオウイカなど、さまざまな種類のイカを食べます。
- 数多くの自然科学者達がここカイコウラで何度も試みたにも関わらず、生きているダイオウイカの姿は日本沖にある自然生息域でしか見られませんでした。
- ダイオウイカは平均で体長12mまで成長しますが、18m以上にまで大きくなることも知られています。
エコー位置探知
- 鯨蝋を通過した音波は、強化され増幅されます。マッコウクジラは世界で最も騒々しい生き物のひとつであると言われており、230デシベルと いう音量を記録したこともあります。マッコウクジラは、このソナーをエサの位置を知るためだけでなく、エサを失神させたり殺したりする目的でも使っている と考えられています。
マッコウクジラの頭部
- マッコウクジラはどの動物よりも大きな脳を持っています。脳は大体バスケットボールと同じサイズで、人間の脳の約7倍の大きさです。
- マッコウクジラの頭部には鯨蝋(げいろう)があり、約2.5トンの油が含まれています。
- かつて鯨蝋が精子や精液だと思われていたのが、マッコウクジラの英語名(sperm whale/スパームホエール)の由来です。
- かつて鯨蝋はロウソク、化粧品、ミシンなどの産業用機械の潤滑油として多用されていました。ロールス・ロイスのエンジンや変速機、初期のアポロ宇宙計画でも使われていたことで有名です。
- 鯨蝋は、エコーによる位置探知や浮力の調整に使われていると考えられています。
深海への潜水
- カイコウラ沖のマッコウクジラは、40~60分間、水深1000m以上まで潜ります。
- マッコウクジラは世界で最も深くまで潜水できる哺乳類で、2時間以上にわたり、3000m以上の深さまで潜水可能です。